機械設計や部品加工において、軽量で加工性の高いアルミ合金は非常に重要な材料のひとつです。
しかし一言に「アルミ」と言っても、その中には1000番台から7000番台までさまざまな種類があり、それぞれに特性や用途、適した加工方法が異なります。
本記事では、アルミ合金の代表的な番手ごとに、よく使われる材質・主な合金元素・メリットとデメリットを一覧表で分かりやすくまとめました。
これからアルミ材を選定したい方、材料の違いを整理したい方は、ぜひ参考にしてください。
アルミニウムについて
アルミ一覧表
番手 | 代表材質 | メリット | デメリット | 主な合金元素 |
---|---|---|---|---|
1000番台 | A1050 A1100 |
・加工性が非常に良い ・耐食性・熱伝導性に優れる |
・強度が非常に低い ・構造部品には不向き |
純アルミニウム (純度99%以上) |
2000番台 | A2017 (ジュラルミン) A2024 (超ジュラルミン) |
・高強度で軽量化に適する ・切削加工性が良い |
・耐食性が低い ・溶接性が悪い |
アルミニウム +銅(Cu) |
3000番台 | A3003 | ・純アルミより強度が高い ・成形性が良い |
・熱処理で強化できない ・高強度用途には不向き |
アルミニウム +マンガン(Mn) |
4000番台 | A4032 | ・耐摩耗性に優れる ・熱膨張が少ない |
・強度が低い ・一般用途では採用例が少ない |
アルミニウム +シリコン(Si) |
5000番台 | A5052 A5056 |
・強度と耐食性のバランスが良い ・溶接性に優れる |
・高温での強度低下が大きい ・応力腐食割れの懸念がある |
アルミニウム +マグネシウム(Mg) |
6000番台 | A6061 A6063 |
・強度・耐食性・加工性のバランスが良い ・熱処理で強度を向上できる |
・極端な高強度用途には不向き ・表面硬度が低く傷がつきやすい |
アルミニウム +マグネシウム(Mg) +シリコン(Si) |
7000番台 | A7075 (超々ジュラルミン) | ・アルミ合金中で最高クラスの強度 ・軽量かつ高剛性で航空用途に最適 |
・耐食性が低く、表面処理が必須 ・溶接や成形が困難 |
アルミニウム +亜鉛(Zn) +マグネシウム(Mg) |

機械設計業界では、3000番台と4000番台はかなり特殊環境でしか使用されないため、新入社員の頃は外してしまってもよいかと思っております(※あくまで個人の感想です)
それよりも非常に使用頻度の高い5000番台(A5052, A5056)についてはしっかりと学んでおきましょう!
(※こちらも個人の感想です)
A5052の規格


分類 | 代表的な板厚(mm) | 主な用途例 |
---|---|---|
極薄板 | 0.3 / 0.4 / 0.5 / 0.6 / 0.8 | 装飾材、軽量カバー、薄物パネル |
薄板 | 1.0 / 1.2 / 1.5 / 2.0 / 2.5 | 筐体、板金カバー、建材部品 |
中板 | 3.0 / 4.0 / 5.0 / 6.0 / 8.0 / 9.0 / 10.0 | ブラケット、機械部品、補強板 |
厚板 | 12 / 15 / 16 / 18 / 20 / 25 / 30 / 35 / 40 / 45 / 50 | フレーム構造、ベースプレート |
A5056の規格


分類 | 代表的な直径(mm) | 主な用途例 |
---|---|---|
小径 | φ2 / φ3 / φ4 / φ5 / φ6 / φ8 / φ10 | ピン、リベット、精密ネジ部品、軽量シャフト |
中径 | φ12 / φ15 / φ16 / φ18 / φ20 / φ25 / φ30 | 軽荷重シャフト、ブラケット、機械部品、スペーサー |
太径 | φ32 / φ35 / φ38 / φ40 / φ45 / φ50 | ベース部品、大型ブラケット、旋盤加工素材 |



A5052とA5056の代表的な規格を書いておきました。
しかし材料規格は取引先メーカーによって異なります。これ以外にも対応規格は多々あるかと思います。
なので新入社員の方は、先輩や上司によく使う材料規格の一覧表などを貰っておきましょう!
アルミの加工方法について
アルミ合金の中でも広く使用されている A5052 と A5056 は、それぞれに適した加工方法があります。
材質の特性や形状に応じて、正しい機械加工方法を選択することが重要です。
A5052 は、主に板材として使用されることが多く、穴あけ・フライス加工・曲げ加工などに適しています。そのため、フライス盤やマシニングセンタによる平面加工・ポケット加工などが一般的です。
一方、A5056 は、丸棒として使用されるケースが多く、回転対称形状の部品に加工されることが多いため、旋盤による加工が基本です。
フライス盤と旋盤を混同しないように注意して、それぞれの材料に合った加工方法を選ぶことで、加工精度と仕上がり品質を高めることができます。
フライス盤の加工機械イメージ図(※A5052板材の場合)


旋盤の加工機械イメージ図(※A5056丸棒の場合)





例えば丸棒の加工図面を書くときに、図面の表題欄に「A5052」と書いてしまうと、検図や加工メーカーから問い合わせ or お叱りが来るかも。
P.S.
私は20代を小規模の町工場で育ったので、そういう図面を書くと加工職人さんに図面を床に捨てられ、その場で罵詈雑言浴びせられておりました💦
今だったらパワハラで一発アウトレベルですね笑
終わりに
今回は機械設計でよく使うアルミ材料についてまとめておきました。
アルミ合金は、その番手ごとに特性が大きく異なるため、使用目的や環境に応じた適切な選定が非常に重要です。
1000番台から7000番台までの特徴や代表材質をしっかり理解することで、設計ミスを防ぎ、製品の品質や信頼性を向上させることができます。
今後も本サイトでは、機械設計や材料選定に役立つ情報を分かりやすく発信していきますので、ぜひブックマークや他の記事もご覧ください。
この記事が参考になった方は、SNS(X, 公式LINE)のシェアやブックマークもよろしくお願いします!